それぞれの国の文化のひとつに「音楽」があります。普段何気なく耳を傾けている音楽について知識を深めれば、もっと音楽を気持ちよく聴けるかもしれませんよ♪
リオデジャネイロ五輪の前に、ブラジル音楽について知ってみませんか?今回は「ボサノヴァ」編!!!
ボサノヴァの誕生
1950年代~1960年代、Jazzとブラジル音楽を合わせたのが始まりです。
当時のブラジルでは、都会の若者が聞きたいと思う自国の音楽がありませんでした。ゆったりとしたリズムで大人の恋を歌うものでは満足できなかったのです。
そして刺激的なアメリカのJazzを聞くようになります。中でもフランク・シナトラは絶大な人気でした。
フランク・シナトラ~just one of those thing~
しかし、若者たちはアメリカの真似ではなく、自分たちで演奏出来るオリジナルの音楽スタイルを探していたのです。そこで生まれたのがJazzとブラジルの音楽を合わせたもの。特にサンバの影響が大きく、Jazzにサンバのリズムが加わったスタイルです。
情熱的なイメージのサンバと、ゆったりとした印象のボサノヴァはなんだか共通点がないようにも思えてしまいますが・・・。
そしてこの音楽は「Jazzの派生」としてアメリカでも大ヒットをします。アメリカを中心に活動しているミュージシャンはボサノヴァをJazzっぽいアレンジで英語で歌うことが多いです
アストラッド・ジルベルト~Fly me to the moon~
ちなみに本家のボサノヴァの、あの不思議な言葉はポルトガル語です。ブラジルが拠点のアーティストはポルトガル語でラテンの雰囲気ですよね。サウンドはJazzっぽいけれど、少し違いホットなイメージはブラジルっぽいと思いませんか?
ジョアン・ジルベルトとアントニオ・カルロス・ジョビン
ブラジルの若者たちが自国の音楽に満足出来ずに、新しい音楽を探していたころ現れたのが「ジョアン・ジルベルト」です。歌手になるためにリオへ出たが、上手く行かずに数年の放浪の旅へ。
そこで見事に自らのスタイルを完成させてリオへ戻ってきました!
それをリオの若者達が大歓迎し、あっという間に大ブームになりました。これが「ボサノヴァ」と呼ばれるようになったのです。
ジョアンが何日間もバスルームに閉じ込もってギターを鳴らし、試行錯誤した末、それまでになかったスタイルのギター奏法を生み出すことに成功。変奏的なJazzや抑圧された曲調を表現したのです。
ちなみに「ボッサ」とは素質・傾向という意味で「ノーヴァ」は新しい・独自という意味を持っています。それが合わさって「ボサノヴァ」ね。1950年代のリオで良く使われていた俗語です。
英語にしたらNew styleといったところでしょうか。この言葉は音楽だけに使われたわけではなく、例えば「彼ってボッサがあるよね~」とか最新の家電なんかもボサノヴァって言っていました。
要するに目新しいものには何でも使ってオッケーなわけなんです。それまでの古風な、昔ながらの音楽から離れて新しい「ボッサ・ノーヴァ」が若者の間で使われるようになりました。
話を戻しますと(^^;独自のスタイルを完成させたジョアン・ジルベルトはトレードマークの歌とギターのコンビネーションを作り出しましたが、もう1人、数々の名曲を作った「アントニオ・カルロス・ジョビン」もボサノヴァを語る上で欠かせません。
ジョアン・ジルベルトが現れる少し前から独自に斬新な音楽を完成しつつありましたが、ジョアンの出現によってインスピレーションを得て決定的に新しい音楽を生み出す事に成功しました。
ジョアンの演奏、そしてジョビンの曲がボサノヴァの魅力のかなり大きな部分を形作っているのは間違いありません。
ブラジルでのヒットのきっかけ
1958年にアントニオ・カルロス・ジョビン作曲、ジョアン・ジルベルトの歌とギターによる「Chega de saudade」(邦題は「想いあふれて」)のシングルレコードがボサノヴァの最初の曲と言われています。
ジョアン・ジルベルト~想いあふれて~
この曲のリリースの時点ではボサノヴァという呼び方はされていませんでした。1952年~1957年ころボサノヴァの原型が作られて、そして発展したと思われます。1963年、ジョアン・ジルベルトがアメリカのサックス奏者「スタン・ゲッツ」と共演した「ゲッツ/ジルベルト」が制作されて、アメリカで大ヒット。
アメリカの大衆に「ボサノヴァ」を浸透させました。
ゲッツ・ジルベルト~イパネマの娘~
1950年代〜60年代に作られた多くのナンバーは、爽快さ、親しみやすさから、今なおスタンダードとして世界各国で聴かれ頻繁に取り上げられるようになりました。「ザ・ビートルズがボサノヴァを殺した」という言葉があるように、ボサノヴァのアメリカ上陸が1962年、ビートルズは1964年。
もし、ビートルズが現れなかったらボサノヴァがアメリカだけではなく全世界のポピュラー音楽の中心になっていたかもしれないよ?という推測から言われた言葉です。
日本では現在でもファンは特に多いと言われています。その理由はボサノヴァは中流階級で生まれた音楽なので、日本人の多くが中流(意識が高い)ことが関係しているのではないかと言われています。
また、2000年ころからのカフェブームで店内で流す音楽としてJazzなどと共にボサノヴァも多く取り上げられたことから、日本人にとって比較的身近なジャンルの音楽であると言えそうです。
ボサノヴァの特徴
必ずと言っていいほど使われるのがナイロン弦のクラシックギター。ピックを使わず指で奏でます。ジョアン・ジルベルトに代表されるギターとボーカルだけの演奏。
サンバの基本的要素を、リズムを分かりやすく外国人にも受け入れやすいようにアレンジしています。
基本的なリズムは親指はサンバのテンポを一定に刻み、他の指はシンコペーション(通常のリズムの中に変則的なリズムを加える手法。音楽に緊張感を生み出します)を刻む。
この独特のギター奏法を叩き分けるという意味の「バチーダ」と呼ばれます。
そのギターのサウンド、リズムに合わせて優しくささやくように歌う・・・。これが抜群にクールで若者たちに大歓迎されました。
奏法と共にモダンな響きを持つことも重要で、転調を多用した楽曲の新しさがボサノヴァの特徴です。
デリケートなサウンドに合わせてドラムも静かなリムショット奏法(太鼓の叩き方のひとつ。スティックでスネアドラムのふち”リム”を叩く。カッッカッッと乾いた音を出す)が開発されました。
詞の内容も、これまでのドロッとした恋愛のものから自由で若々しいものに変化したのがボサノヴァです。
まとめ
音楽をジャンルで分けるのは、とても難しいです。どんな音楽も他のジャンルの音楽からの派生で新しいものが出来ていますからね。
でも、このボサノヴァの不思議な魅力を少しでも分かっていただけたら幸いでございます。
時間も季節も選ばないオールタイム気持ちよく聴けるボサノヴァ。ブラジルの乾いた爽やかな風を連れて来てくれるようです♪
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